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最新刊中心の書評。昔の掘り出し物もたまに書きます。その他雑感も。

応用情報技術者試験にゼロからから2ヶ月半の独学で合格する方法

 本日応用情報技術者試験の合格発表があり、無事合格することができました。2月から始めて不安もありましたが、無事4/15の試験に合格するまでの勉強法を掲載しておきます。もちろんあくまで僕のやり方なので、各々自分に合うやり方にカスタマイズしていただければ、と思います。正確に理解して進めていきたい方は、試験対策用よりも一般の入門書をおすすめします。本記事は、あくまで短期間で「合格」を勝ち取るためのものです。

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応用情報技術者試験とは

IPAという機構が行なっている情報系の資格のひとつで、4段階のレベルのレベル3に当たります。

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 左側の青くなっているITパスポート試験がレベル1、真ん中の最下段に表示されている基本情報技術者がレベル2、そしてその上の応用技術者試験がレベル3、その上にある分野別の試験がレベル4となっています。詳しく知りたい方は公式HP(

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験

)をご覧ください。

 

大まかな計画と実行

僕自身は、IT系のバックグラウンドは全くなく(理系ですが、生物系ですので)、コンピューターの仕組みなんて何も知らないところからのスタートでした。ですから受験はしないまでも、レベル1のIT パスポートから学習する必要があると思ったのです。もちろん受験するのは応用情報技術者だけですが。

ですから、以下の計画で学習を進めました。

ITパスポート 2/3~2/16(2週間)

基本情報技術者 2/17~3/6(3週間)

応用情報技術者 3/8~4/15(試験まで)

 

ITパスポート

まずはざっくりと中身を理解するための2週間です。この辺りは、2日に1回1時間ぐらいかな〜という感じです。それほど本気で取り組んでいたわけではないです。以下の本をひたすら読んでいました。

 

かんたん合格 ITパスポート教科書 平成30年度 かんたん合格シリーズ

かんたん合格 ITパスポート教科書 平成30年度 かんたん合格シリーズ

 

読んだそばから忘れていきますが、そんなことにはお構いなく読み進めていきます。覚えることではなく理解することが目的なので、頭の中に知識を通過させて、イメージだけ残していくイメージです。300ページ程度ですが、1ページあたりの分量がかなり少ないので、どんどん読み進めていきます。どうしてもただ読むのは集中できない、という方は時間制限を決めて(僕は1ページ1分とかでした)、クリアできるかどうかをチャレンジしながら進めていくと、モチベーションも保ちやすく、また早く読めることができます。繰り返しになりますがとにかくイメージをつかむことが大事なので、速さが全てなのです。

 

次にこの本を読みました。 

 

 この本は過去問集なのですが、まったく解かずに進んでいきます。知識を覚えている訳などなく、解けなくてモチベーションが下がるだけだからです。見開きの左ページに問題、右ページに回答があり、教科書のように読み進めていきます。このステップでは、どういう風に問われるかを学んでいきます。よく勉強法の本やブログなどに「過去問を真っ先に」と書いていますよね。もちろん間違いではないのですが、全く知識がない状態で過去問を見ても、傾向すらつかめないですよね(笑)。ですから、そんなに手間がかからない教科書を最初に読んでから、問題集に移行した訳です。もちろん知識をつける意味もあります。

 

基本情報技術者

3週間です。この時期はインターンやバイトなどが忙しくあまりまともにできなかったのでこんなにかかりましたが、本気になれば1週間程度に圧縮できます。だって、この1冊を読むだけですから。

 

かんたん合格 基本情報技術者教科書 平成30年度 かんたん合格シリーズ

かんたん合格 基本情報技術者教科書 平成30年度 かんたん合格シリーズ

 

 なんとなくKindle版で買って読み始めてから気づいたのは、「ITパスポート」と被りが多い!ということでした。肌感覚ですが、6割ぐらいはITパスポートの内容でカバーできるイメージでしょうか。ただ実はこのステップは無駄ではないと思います。まず、記憶の上塗りができること。同じものを読むとマンネリ化するものですが、少し違う視点から書かれると覚えやすくなります。幸い、同じシリーズのITパスポート編と著者が違うんです。2つめのメリットはモチベーションが保ちやすいこと。本を読んで100%わからないというよりも、半分ぐらいはわかっている方が読み進めやすいものです。基本情報技術者編は400ページ以上あり、これぐらいはわかっていないと読み続けるのは厳しそうです。。進め方としては、例のごとく時間制限を設けてちゃっちゃかちゃっちゃか進めていきます。

応用情報技術者

使用したのはこの三冊です。

平成30年度【春期】【秋期】応用情報技術者 合格教本
 

 

 

 

 

 今回は、いつもと違い、問題集から進めていきます。応用情報技術者のテキストをパラパラ見たところ、基本情報技術者とかなり被っていることがわかったのです。もはや知識がない状態とは言えません。ここまでくると、例の「過去問ファースト主義」を実行できるわけです。

手順は以下の通り、非常にシンプルです。

1 問題をとく

2解けた問題は解説を読む

  解けなかった問題は解説と、テキストの関連部分を読む

3 関連知識をまとめて、問題の解説部分に書き込む 

これをひたすら繰り返します!

僕は問題演習だけだと飽きてしまうタイプなので、以下のシリーズも気分転換に読みました。もちろん役だったのは間違いないですが、試験対策用の本ではないですし、もちろん必須ではないです。

 

イラスト図解式 この一冊で全部わかるセキュリティの基本

イラスト図解式 この一冊で全部わかるセキュリティの基本

 

 ただし、セキュリティ編に関しては、午前でも最重要で、午後でも唯一の必須回答問題なので、読んでおくといいかもしれません。

 

選択問題について

午後は問1のセキュリティの問題が必須で、そのほかの10問のうちから4問を選択します。これらのうち、短期間で合格したい方が選択すべきなのは以下の四つです。問2経営戦略、問4システムアークテクチャ、問8情報システム開発、問9プロジェクトマネジメントの4つです。理由は、確実に常識で解けるからです。午後試験の合格ラインは6割です。僕が提示した問題は、決して満点が取れる類の問題ではありません。実際の業務に近い問題も出るので、満点は限りなく不可能に近いでしょう。しかし、文章を読み解くだけで知識がなくても解ける問題が4割程度、また午前の知識で解ける問題が3割程度あるので、多少失敗しても6割には十分のるのです。それに対し、問3のプログラミング、問5のネットワーク、問6のデータベースは正反対です。内容を完全に理解して使いこなせれば満点も狙える科目です。しかし、今回ご紹介しているのは短期戦です。これらの分野は理解していないと読解力だけでは手も足も出ず、最初の問題がわからないと、それを活用して解く、後の問題も芋づる式に全て落としてしまいます。合格ラインが6割と低めに設定されているのにそんなリスクを背負う必要は全くありません。したがって、上で述べた4問を選択されることをおすすめします。

振り返って

僕の方法は、自分で試行錯誤したこともあり、重複が多いです。しかし、1わかっている部分が多いと本が読みやすい、2簡単なところから1冊ずつ終えていくという達成感が味わえる、という2点で、ITパスポートから順に進めていくのがおすすめです。(受験するのは応用情報技術者からで十分です)

もちろんすでに実力があり、力試しや実力証明のために受けるのであれば、最初から過去問をといて敵を知ることから始めるのが最善なのは、言うまでもありません。

次回の試験は10月21日です。2ヶ月でも受かったのですから、4ヶ月前から始めれば、楽勝に勉強を進められるはずです。僕もレベル4の試験のどれかを受けようと思います。では、一緒に最初の一歩を踏み出しましょう。

 

かんたん合格 ITパスポート教科書 平成30年度 かんたん合格シリーズ

かんたん合格 ITパスポート教科書 平成30年度 かんたん合格シリーズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歴史学の革命ー『歴史は実験できるのか』書評

歴史は実験できないーそれは長い間研究者たちの常識であった。分子生物学や物理学など、自然科学に分類される科学は実験科学である。変化する要素を一つ(あるいは複数)決めてその要素以外は全て揃えることで、考えたい要素が決定的な要因かを確かめるのだ。しかし歴史はコントロールできない。過去にタイムマシンで戻ってコントロールすることはできないし、現在のことでも倫理的な制約でできないことが多いのが辛いところだ。本書はそんな常識を打ち破ってくれる、まさに革命的な本だ。

 

 

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史

 

 

 

ではどうやって実験するのか。もちろん変化をコントロールするのではない。自然が勝手に実験してくれるのだ。例えば第4章。カリブ海イスパニョーラ島は、東側はドミニカ共和国、西側はハイチと2国に分かれている。1700年代の植民地時代、ハイチはドミニカ共和国よりもはるかに強大だった。しかし現在はハイチは世界の最貧国の一つになっているのに対し、ドミニカ共和国は一人当たりの平均所得がハイチの6倍もあり、乳児死亡率はわずか0.4倍だ。この違いは、元々の自然環境の違いと、植民地時代の宗主国の違い(ハイチはフランス、ドミニカ共和国はスペイン)だと喝破し、極めて理路整然と説明していく。歴史の特徴として、時系列に説明する必要があるのだが、ジャレドの説明は、しっかりとした1本の線が通っているのだ。

 

さらに、歴史学の最大の弱点である、数値化のしにくさを克服して行く。森林破壊を深刻さで5段階に分類したり、島の年齢を3つに分類したりするのだ。大雑把すぎると思われるだろうか。しかし実際には自然科学も、モデルを使ったり、数字の小さい桁の数字は丸めたりしているのだ。これぐらいは、許容できる範疇だ。

 

さらにすごいのが第5章だ。歴史、しかもデータが少ない時代の歴史を統計学を使って紐解いて行く。アフリカの奴隷貿易がなければアフリカはもっと発展していた、という一見当たり前な事実をこれでもかと丁寧に証明して行くのだ。この章の特筆すべき点は研究の方法にある。その証拠に、筆者は研究の方法に実に16ページも費やしている。それは、因果関係が逆転していないか(貧しいから奴隷貿易で搾取されたのではないか)、第三の要因があるのではないか,また測定誤差がないか、という自然科学で考えるべきことを慎重に検討するためだ。

 

本書ではこのような例をたくさん提示してくれる。各章1つの研究で、7章ある。全て複数の似たような事例を「比較」しているので、自然科学の実験に極めて近い。他には、銀行の設立と民主主義の度合いの関係、イギリスのインド植民地統治がその地の発展を遅らせたこと、ナポレオンがドイツに強制的にもたらした平等の制度と経済発展の関係などの論文が紹介されている。全て、比較(と統計学)によって丁寧に記述されている。そして、ナラティブな説明と統計学は不可分な関係にあることもわかってくる。

 

実際に、研究のアプローチの仕方も変わってきている。第1~4章の前半を読めばわかるように、従来の研究は、ナラティブなストーリーを組み立て、統計学を用いて仮説が当てはまるかどうかを確認して行く。しかし、4章の後半~7章のアプローチを見ると、最初に統計学を使って、何らかの結果を出す。そしてこの因果関係は、ナラティブなストーリーでは絶対に人間には思いつけないものであることが多い。 例えば、

溶岩を噴出する火山がある島よりも、近くの火山から灰が風で運ばれてくる島の方が、森林破壊は進まない。そして、遠い場所から大量の塵が風で運ばれて来ない島よりも、何千キロメートルも離れた中央アジアのステップから大量の塵が東風に乗って運ばれてくる島の方が、森林破壊の進行は遅いことがわかった。

などと書かれてある。こう言う事実を見つけて、そのためのナラティブなストーリーを組み立てて行くのだ。つまり事実を見つけるためにストーリーを組むのではなく、事実を見つけた後にそれを説明するストーリーを組んで行くのだ。これは方法論の問題なので、歴史研究のアプローチを変える大転換だ。皆さんもぜひ本書を読んで、その醍醐味を味わってほしい。歴史は実験できると。

 

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史

 

 

 

 

極端に生きろ!『読書という荒野』書評

 恐怖—これが、この本に出会ったときに湧いてきた、最初の感情だ。"読書術"的な本に食傷気味になっていた僕は、もう決してこの手の本を手に取るまいと思っていた。ただこの本の表紙を見ると、どう見てもただ者ではない。その上、また秋元康さんの推薦の言葉が畳み掛けるように恐怖心を煽って来る。

見城徹の読書は血の匂いがする。ただ、文字を追って『読了』と悦に入っている輩など、足元にも及ばない。書を貪り食ったものだけが知る恍惚の表情を浮かべている。著者の内臓を喰らい、口から真っ赤な血を滴らせている。

 と赤字で煽っているのだ。実際読み終わった後に表紙を見直すとわかるのだが、この本は表紙が全てを物語っており、本質が集約されている。著者の恐い表情も含めてだ。さらに、本の山に囲まれた中で見城さんが読んでいる本をよく見ると、なんと「口から真っ赤な血を滴らせている。」とは無縁そうな、西野 亮廣さんの『革命のファンファーレ』ではないか。もう表紙で即買いを決定させられる、凄まじい本だ。

 

 

読書という荒野 (NewsPicks Book)

読書という荒野 (NewsPicks Book)

 

 本書のメッセージはシンプルに2つ。「極端な人生を追体験しろ」、そしてそれによって「語彙と想像力を磨いて、全力で生きろ」だ。

 

著者が冒頭で語っているように、人の一生は平凡だ。さらに、安保闘争学生運動などに縁のない我々は、より平凡な生き方をせざるをえない。少し困ったらSNSで相談もできるし、過激な運動に身を投じる機会なんて皆無に等しい。見城さんは学生運動から逃げてしまったという猛烈な劣等感に苛まれて生きている。そんな見城さんですら大量の名文学に触れて極端な人生を代理体験しているのだから、僕たちが文学を貪るように読むのは必須だ、と強く納得させられる。

 

本書でいう極端な生き方は、極端の持たざるものと持てるものの2つだ。しかし、見城さんが紹介している作家の中で、極端に持てるものは石原慎太郎さんぐらいだ。あとはみんな極端に持たざる者だ。そしてそういう生き方をした人にしか優れた表現は生み出せない、と見城さんは論を進める。全くその通りだ。どのページだか忘れてしまったが、見城さんは「生き方を犯された」という表現を使っている。こんな表現、極端な生き方をしている人しか絶対に生み出せるわけがない。極めて象徴的な表現だ。

 

他者への想像力を磨くという点で、見城さんは差別構造を扱った小説家をたくさん紹介している。吉本孝明さん、五木寛之さんなどだ。結局のところ、差別構造の中で虐げられ極限状態の中で、想像力が最も生まれるようだ。

 

それを生かして、見城さんは異常なまでにストイックな生き方をしている。五木寛之さんの連載を買いてもらうために、メールがない時代に5日以内に感想を送り続けたり、幻冬社を立ち上げた時に周囲からの冷ややかな言葉にも関わらず、孤独な戦いを続け、今日に至っている。そんな地位も名誉も得た状態になっても、「はじめに」によると、「自己検証」、「自己嫌悪」、「自己否定」を続けているそうだ。

 

この三つの言葉を見て、僕は、「自己分析」、「謙虚さ」、「向上心」と言い換えたくなってしまう。まだまだ極端な生き方ができていないようだ。ということで、見城さんが最もおおすすめする小説から読むことにした。p165に載っている、恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』だ。

 

読書という荒野 (NewsPicks Book)

読書という荒野 (NewsPicks Book)

 

 

 

蜜蜂と遠雷 (幻冬舎単行本)

蜜蜂と遠雷 (幻冬舎単行本)