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最新刊中心の書評。昔の掘り出し物もたまに書きます。その他雑感も。

【読書ノート】『スマホが神になる 宗教を圧倒する「情報革命」の力 (角川新書)』

スマホ—今やこれなしでは1日たりとも、いや、1時間も過ごせないだろう。これほど日々の生活に根付いた存在を宗教と比較し、宗教に取って代わる理由を丁寧に考察したのが本書だ。

 

 第1章ではまず、スマホが我々に与える影響について考察している。まず一つは、携帯電話時代には有料が当たり前であった機能のほとんどが無料のアプリという形で配布されていることだ。私たちの金銭感覚を大きく変えたのは間違いないだろう。またポケモンGOというアプリは、今まで家に閉じこもっていた人を外に出したという点で、人を動かすことにも成功した。

 

では、スマホはなぜ宗教に取って代わるとまで言えるのだろうか。2つの点で宗教と比較できる。1点は救済だ。今まで宗教の役割であった救済が、実際にスマホによって(スマホを通して)行われたのだ。東日本大震災では、公民館に取り残された人々のうちの1人の女性の息子がイギリスから助けを求めるツイートをし、救助された。また登山の経路を家族に伝えることのできるアプリ「compass」などもある。また、ポケモンGOは、うつ病広場恐怖症の改善に役立っているという報告もあり、広い意味でに救済と言えるだろう。

 

2つめは、畏怖である。神は、自らに逆らうものを容赦無く罰してきた。だから人間は恐れを感じて、例えば日本人は毎日神に水と榊を捧げてきた。それと同じことがスマホでも実際に起こっている。常にバッテリーを気にしないと落ち着かない、無くしたらパニックになる、コンサートや講演中に鳴らしてしまったら真っ青になる、などまだまだある。

 

さらにスマホは情報を与え、わからないことに対して答えてくれるという意味では宗教に優っているかもしれない。

 

スマホと宗教を比較してきたが、満員電車で、食事中、トイレでスマホを使う私たちは、そんなことを考える機会もない。日々に向き合うために本書を読み込んで、私たちの生活を俯瞰した目線で捉え直していきたい。