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最新刊中心の書評。昔の掘り出し物もたまに書きます。その他雑感も。

DNAは変えられる!『ゲノム編集の衝撃』

 ゲノム編集、誰でも一度は耳にしたことがある言葉です。しかし、なかなかゲノムの細かい話を知る機会はありませんよね!今回は知識ゼロからでも、ゲノム編集とは何かというところから応用範囲、期待と懸念までわかるようになれる素晴らしい本を紹介します!

 

ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー

ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー

 

  この本は、NHKクローズアップ現代での番組を元にして、その時の取材・制作班が執筆しています。それだけにとてもわかりやすく、またプラスとマイナス両面を淡々と記述しているので入門書として最適です!

 

 

基礎知識

 知識ゼロからでも大丈夫と言いましたが、生命科学の学習で1番大事なのは図で把握することです。特に、セントラルドグマという生命の最も根本の仕組みについて図を用いて理解するのが重要です。その解説記事を書こうと思っていたのですが、今まで読んだ30冊にも及ぶどの本よりもわかりやすい記事を見つけてしまったので貼っておきます。これのpart1と2を読んでから、『ゲノム編集の衝撃』を読むか、読みながらわからないところを下のサイトで調べるのをオススメします。

koto-science.hatenablog.com

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ゲノム編集とは何か

 私たちの体はDNA、すなわち遺伝子の集まりからなっています。そのDNAが、ヒトの体で働くタンパク質について、どこの場所でどれぐらいどの種類のタンパク質ができるかを決めることで、人の性質を決定する設計図の役割をしています。そしてそれは変えられないからこそ、「あの人は生まれつき背が高いから〜」というセリフも(文句も)出てくるのです。

 

 しかしそれも変化してきています。遺伝子組み換えと言う言葉を聞いたことがあるでしょうか。トウモロコシなどでおなじみでしょう。そして少し抵抗があるかもしれません。遺伝子組み換え技術は外から遺伝子を入れ込むことでなされていましたが、どこに目的の遺伝子が組み込まれるかは曖昧でした。それが狙い撃ちしたところに高確率で入れられるようになった、これは恐ろしい発明です。例えばこれまでは数百年たってもできるかわからなかった、魚の品種改良が、今度は数年で確実にできるようになってしまったので、遺伝子組み換えとは全く次元の違う話です。

何に役立つのか

 結論から言うと、食糧危機の回避とエネルギー問題の緩和です。例えば、もしもミオスタシンという遺伝子の機能を壊して筋肉量が多いマダイやウシを作ることができれば、価格を大幅に下げられるようになります。栄養価の高い魚も作れつかもしれません。現在では毒があり多くの人手をかけて摘んでいるジャガイモの芽を無くしてしまうことも可能である可能性が高いです。端的にいえば食糧危機に役立つのです。またバイオ燃料などの研究も広がりそうです。

 

 さらに重要なところでは、医療があるでしょう。がん細胞が薬に耐性を持ってしまう原因や転移に関わる遺伝子などを突き止められるかもしれません。また、血友病の原因遺伝子を突き止められれば、遺伝子を編集して治すことも可能になるでしょう。そしてHIVウイルスは白血球の表面の突起を足がかりに侵入して増殖します。そこで突起を作る遺伝子を壊せばHIVも根治できそうです。

 

どんな懸念があるのか

 まずは、過度に恐れて何もできなくなってしまうことです。現在、遺伝子組み換えを行った生物は、自然界から適切に隔離し、外に出すときには十分な安全性を確保することを求められます。この足かせが、企業のみならず大学の研究機関までも研究することを困難にしており、ゲノム編集したを遺伝子組み換え食品と同等に扱うのかどうかも議論されています。また、人々がゲノム編集された食べ物を受け入れず、せっかくの恩恵が行き渡らない可能性もあります。もちろん注意を払うことは大切ですが、きちんとした知識に基づいて専門家が丁寧に啓蒙していくことが重要です。

 

 そして、逆説的ですが、特に医療では慎重に取り扱わないと大変なことになってしまうかもしれない、ということです。こんな曖昧な書き方をしているのは、人間が想像もつかないようなことが起こるかもしれないからです。体細胞という体の中のほとんどの細胞は、その個体の中でしか増えないのである程度介入することも許されるでしょうが、生殖細胞は子孫代々まで伝わります。それを安易に変更してしまい、意図せぬ結果になったときに何の責任もない子孫が苦しむのは絶対に避けなくてはなりません。

 

まとめ

書評というよりも読書ノートに近くなってしまいました。やはり、知識がないと書評はなかなか書けない、ということですね。

honzyme.hatenablog.com

とはいえ、ゲノム編集についてはお分りいただけたでしょうか?より分りやすいブログを目指していくので、ぜひコメントを記入していただけると嬉しいです!